学習の場や仕事の面で重視されるだけでなく、SNSを活用したコミュニケーションの機会が増えるなど、公私ともに「アウトプット」を行なう場面が増えている昨今。
『学びを結果に変える アウトプット大全』は、そんなアウトプットの意義やメリット、誰でも取り入れられる手法などをわかりやすく解説した一冊です。「話す」「書く」「行動する」の3カテゴリーに分けられた80項目の方法とともに、アウトプット力を強化する7つのトレーニング法を教えてくれます。
著者は、驚異的なアウトプット量で知られる精神科医の樺沢紫苑さん。精神科医ならではの、脳の仕組みを交えたわかりやすい説明と取り組みやすさが支持され、8月の発売以来、瞬く間に累計20万部のベストセラーとなっている本書について、出版元であるサンクチュアリ出版のみなさんにお話を伺いました。
- 学びを結果に変えるアウトプット大全
- 著者:樺沢紫苑
- 発売日:2018年08月
- 発行所:サンクチュアリ出版
- 価格:1,566円(税込)
- ISBNコード:9784801400559
今回取材にご協力いただいた方
(左から)
サンクチュアリ出版
取締役営業部長 市川聡さん
広報部宣伝チーム 岩田梨恵子さん
編集部 吉田麻衣子さん
広報部宣伝チーム 南澤香織さん
「日本一情報発信する精神科医」がアウトプットの悩みを丸ごと解決
――本書はどのようなきっかけで作られたのですか?
吉田 私自身も日々「本を作る」というアウトプットをしていますが、アウトプットに対してどこか苦手意識があったんです。「もっとうまく説明できるようになりたい」「早くいいアイデアが浮かぶようになりたい」「文章がうまくなりたい」といった悩みに、すべて答えてくれる本があればいいのになと思ったことが企画のきっかけです。
――著者の樺沢紫苑さんは「日本一情報発信する精神科医」とのことですが、どのように活動されているのでしょうか?
吉田 樺沢さんは、Facebookは8年間、YouTubeは5年間毎日更新、メールマガジンは13年間毎日発行、本も10年連続で毎年2~3冊出版されているなど、まさに情報発信のプロです。そのアウトプット術を丸ごと教えてもらえたらと、執筆をお願いしました。
ちなみに樺沢さんはインプットの量も桁外れで、映画鑑賞は毎月10本以上、本も20冊以上読んでいるそうです。『アウトプット大全』では、そうしたインプットに精神科医としての知見を加えてアウトプットしているので、読者からは「1冊でビジネス書30冊以上の情報が入っていると思う」といった声もいただいています。
――タイトルに「大全」とあるように、本書には80ものアウトプット法が網羅されています。洗い出しだけでも大変そうですが、本作りはどのように行なわれたのですか?
市川 樺沢さんは執筆スタイルとして、本のテーマが決まったら、まずファンの方に向けたセミナーを開催されるんです。そのセミナーで参加者にアンケートをとって、内容をさらにブラッシュアップしていくんですね。 本書も今年2月に企画の打診に伺って、3月にアウトプットを題材としたセミナーを実施しました。
吉田 そのセミナーには、樺沢さんにとって過去最多の参加者が集まったそうです。アウトプットについて「なんとかしたい。でもどうしたらいいかわからない」という悩みが、みなさんの中に潜在的にあったのだと思います。
「プレゼンの資料作成術」については本書でも触れられていますが、樺沢さんは3日でセミナーのコンテンツを考えて、スライド約250枚を作成してお話しされています。私たちも当日聞きに行ったのですが、セミナー自体がおもしろくて、その段階でかなりのコンテンツが揃っていたので、それをもとに本を作っていきました。
市川 セミナー終了後には従来どおり、集まったアンケートに目を通して、樺沢さんと私たちで「読者はどんなことに困っているのか」を考えながら内容をブラッシュアップしていきました。現在読者のみなさんから「何をしたらいいんだろう、というモヤモヤを解決してくれた」「すぐ行動に移せるようになった」という感想を多くいただけているのは、そうした工程を経て、具体的な行動と解決策が提案できたからだと思います。
「笑う」「泣く」もアウトプットのひとつ 心の“予防医学”としても
――アウトプットの方法は、それぞれ「話す」「書く」「行動する」の3つに分けて解説されています。「アウトプットしなきゃ」と思うとつい構えてしまいがちですが、「挨拶する」「雑談する」「ノートをとる」といった身近な方法もあって、アウトプットのハードルがぐっと下がりますね。
吉田 「笑う」「泣く」もありますしね。「自分の中から出力すること」は、すべてアウトプットととらえています。
――80項目あれば、誰でも必ずどれかは実践できるはずだとも思いました。
吉田 樺沢さんとも、「やるからには“アウトプットといえばこれ”といえるような決定版を作りたいですね」と話していました。そのため本書には、欲張りにいろいろな方法をすべて詰め込んでいます。
たとえば「雑談力」の本などを読むと、一時的にはスキルが上がったような気になりますが、完全に定着させるのはなかなか難しいですよね。本書ではさまざまな方法を生活に取り入れていくことで、アウトプットが習慣化され、アウトプットの“インナーマッスル”全体が鍛えられるような本を目指しました。
▼「雑談する」の項目では「長く話す」より「ちょくちょく話す」ことの重要性が脳科学の裏付けとともに解説されています。
▼イラスト付きですぐ取り入れられる雑談例も紹介
――自分が普段している「話す」「書く」という行為もアウトプットなんだと意識することで、アウトプットを堅苦しく捉えなくてよいと思えるようになりますね。自分から何かを発信することで、他者とのコミュニケーションが増えたり、自分や環境の変化を感じられたりすると、考え方や行動の仕方も変わってきそうです。
吉田 そうなんです。この本はビジネス書の棚に置いてあることが多いのですが、“生き方を変える本”だと思っています。冒頭に、「〈現実〉はアウトプットでしか変わらない」と書かれていますが、いくら勉強して頭の中が良くなっても、それを行動として外に出していかなければ何も変わらない。まさに現実世界を変えるための方法が詰まっている本といえます。
――「生き方を変える」というお話が出ましたが、著者の精神科医としての思いも、本書には込められているそうですね。
吉田 あとがきにも書いてあるのですが、樺沢さんは「うつ病になってから病院に行ったのでは遅い。病気を予防する情報を伝えたい」という使命感から、現在はそのための執筆活動と情報発信をメインにされています。『学びを結果に変える アウトプット大全』も、本書で紹介した方法を実践してもらうことで、人間関係や仕事の悩みから解放されて、精神疾患になる人が減るというビジョンのもとに作られています。
「読んだ後やる気になった」「元気が出た」という感想が寄せられているのも、知識を詰め込むだけでなく、変わろうという気持ちを後押ししてくれる内容だからではないでしょうか。
「学びを結果に変える」勉強法も充実
――生き方の本と考えると、読者対象がかなり広がりそうです。
吉田 会社勤めの方からフリーランスまで、年齢・性別問わず幅広い方が買ってくださっています。
市川 弊社のビジネス書の中では、20代の方の割合が多い本だと感じています。個人が発信していかなくてはいけない時代ということで、そうしたことに敏感な若い人たちが反応してくださっているのではないでしょうか。
――ビジネス書ではありますが、本書の“学びを結果に変える方法”は普遍的な内容なので、学生さんにも役立ちそうですね。
吉田 私も「もっと早いうちに知っていたら……」と思いました(笑)。インプット(=暗記)とアウトプット(=問題集を解く)の黄金比率や、手書きすることの学習効果など、どれも勉強法に直結する、すぐに実践できることばかりですよね。実際に樺沢さんの出版記念イベントでは、学生割引を行なったこともあって親子連れの方も多くいらっしゃいました。
▼タイピングのほうが速くて手も疲れないのですが、「手書き」のほうが記憶に残りやすいことは、科学的に実証済みだそう。
――アウトプットのきっかけになるようなキャンペーンも行なわれていますね。
南澤 まず第1弾として、読者に身近なことを気軽に“アウトプット”してもらうTwitterのキャンペーンを実施しました。読むと何かしらアウトプットしたくなる本なので、それを後押ししようと考えた企画です。
岩田 このキャンペーンの特徴は、単純に感想をつぶやくのではなく、「指定のハッシュタグは付けていただくけれど、投稿内容は問わない」「投稿を1か月間続けていただき、その期間で最もフォロワーの増えた方に賞品を差し上げる」という企画内容にあります。優勝者はコンテストをきっかけにtwitterを再開した方で、200人だったフォロワーが500人に増えました。
その後も感想キャンペーンや、「おすすめの旅先」「街中で気になった人・物」といった身近なお題に答えていただくキャンペーンなどを実施しました。
――本書にも「まず始めることが大事」と書かれていますが、発信の契機を作るだけでなく、アウトプットを習慣化するキャンペーン内容ですね。それに、それだけフォロワーが増えたらモチベーションも上がりそうです。
南澤 ほかにも、「『学びを結果に変える アウトプット大全』感想キャンペーン」や「お題でツイートキャンペーン」などを実施しています。
――本書にも「まず始める」ことが大事と書かれているので、発信したくなるような企画はその契機となりそうです。
岩田 アウトプットを念頭においてインプットすると、インプットの質も変わるんですよね。本を読むときにも、流し読みするのではなく「これをどうアウトプットしようか」と意識することで、読んだ内容がより記憶に残ります。樺沢さんも「読書感想を書く」ということを、アウトプット力を高めるトレーニングのひとつとして挙げていらっしゃいます。
吉田 私もこの本をきっかけに、重い腰を上げてtwitterを始めました。ほかにもいくつかの項目を実践していますが、明らかにインプットしたことが記憶に残りやすくなったり、自分の行動が変わったりしている実感があります。
本書はどこからでも読めて、復習もしやすいつくりになっています。悩みはその時々で変わってくると思うので、辞書のように手元に置いて、アウトプットを楽しんでいただければと思います。
- 学びを結果に変えるアウトプット大全
- 著者:樺沢紫苑
- 発売日:2018年08月
- 発行所:サンクチュアリ出版
- 価格:1,566円(税込)
- ISBNコード:9784801400559
【本書の内容】
・アウトプットとは? アウトプットの定義
・アウトプットの基本法則
・アウトプットの6つのメリット 他伝える/挨拶する/雑談する/質問する
依頼する/断る/プレゼンする
議論する/相談する/ほめる/叱る
説明する/自己紹介する 他上手な文章を書く/速く文章を書く/文章を構成する
速く入力する/気付きをメモする/ひらめく
ノートをとる/構想をまとめる/プレゼンスライドをつくる
引用する/要約する/目標を書く/メールを送る 他続ける/教える/集中する/チャレンジする
始める/やってみる/楽しむ/決断する/率いる
笑う/泣く/「怒り」をコントロールする
眠る/運動する/危機管理する/時間管理する 他
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