「夢眠書店」を開店するため、本に関わるさまざまな仕事について学び、一冊の本に込められた熱い思いを知ったねむちゃん。もっと多くの人にそれを届けるため、これまで学んできたことを紙の本にして出版することにしました。
それが、2017年11月30日に発売された『本の本―夢眠書店、はじめます―』。第16話では、『本の本』の著者として、そして装幀家として、夢眠ねむが造本設計やカバーデザインに挑戦しました!
『本の本』に第15話として収録された新エピソードを、ほんのひきだしでは“ロングバージョン”でお届けします。
- 本の本
- 著者:夢眠ねむ
- 発売日:2017年11月
- 発行所:新潮社
- 価格:1,620円(税込)
- ISBNコード:9784103513810
今回の対談相手
(写真左)新潮社 装幀部 二宮由希子
1964年生まれ。芸術新潮編集部を経て装幀部へ。イラストレーションやデザインが好きで、会社勤めのかたわらセツ・モードセミナーやパレットクラブスクール、鳥海修氏の文字塾に学んだ。
(写真右)新潮社 装幀部部長 黒田貴
1964年生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業(ねむちゃんの先輩!)。東京書籍を経て、1995年より新潮社装幀部に勤務。
〈こちらの方にもご協力いただきました〉
新潮社 新潮文庫編集部 小川寛太
1987年生まれ。営業部を経て、文庫編集部へ。『本の本―夢眠書店、はじめます―』の編集を担当した。
憧れていた「ブックデザイン」のお仕事。まさか自分の本を手がける日が来るなんて……!
夢眠:私、ブックデザイナーになりたいって思ってた時期があるんです。本もデザインも、どっちも好きなので、「本をデザインする」なんてそんな素敵な仕事があるんだ!って憧れてて。今日は『本の本』の装幀を自分でできるということで、気合い十分です! よろしくお願いします!
黒田:なんだか照れますね(笑)。こちらこそ、よろしくお願いします。
作る本のイメージを固めよう
二宮:ではさっそくですが、本のデザインを考えていきましょう。ねむさんから「文芸っぽくしたい」というご希望を伺っていたので、イメージに合わせていくつか見本を持ってきました。
夢眠:おお!
二宮:まずは本のおおもとのつくり、「造本」を決めましょうか。「仮フランス装」はいかがでしょう? 新潮社では「クレスト装」と呼ばれているものです。
黒田:「クレスト装」という呼び名は、「新潮クレスト・ブックス」という海外文学シリーズで初めて使われたことに由来しています。表紙を折りたたんで作るんですが、ヨーロッパの伝統的な製本方式である「フランス装」の簡易版で、ハードカバーとソフトカバーの中間のような印象になります。
▼やや大きいサイズの表紙を、天地左右それぞれ折り返し作る。
夢眠:おしゃれですね。かっこいい!!
二宮:本の背はどうしましょうか。「角背」「丸背」とあって、今日お持ちしたサンプルは角背なんですが。
夢眠:四角いのが気持ちいいですね。角背がいいです。
▼上が角背、下が丸背。綴じてある背の部分の形が違います。
二宮:「クレスト装・角背」ですね。今度お会いする時までに束見本をご用意しておきます。では、続いてカバーを決めましょう。今回は「クラフトペーパーデュプレ」という紙を用意しました。
夢眠:「クラフトペーパーデュプレ」……?
二宮:「クラフトペーパーデュプレ」は、表が白くて裏がクラフト紙になっているんです。手触りもいいですよね。
夢眠:本当だ! かわいいですね。これにします! 大好きなクラフト・エヴィング商會っぽさがあって素敵。
二宮:表の白いほうはミントグリーンにもできますが、どっちがいいですか?
夢眠:白いままがいいです! “アイドル・夢眠ねむの本“というより、“本の本”としてかっこいいイメージにしたいので。
二宮:では、ミントグリーンはディテールに入れましょうか。スピン(しおり紐)に使うのがいいかもしれないですね。見本帳を持ってきたので、選んでいただけますか?
夢眠:こんなにいっぱい種類があるんだ! かわいいから無駄にたくさんつけたいけど(笑)……でも、うーん、これかな。
二宮:17番ですね。
黒田:あと、夢眠さんは美大出身ですので、せっかくですから『本の本』という題字を、活字ではなく手書きのレタリングで書いてもらおうかなと思っています。
夢眠:いいですね、そうさせてください!!
黒田:サブタイトルはどうしましょうか?
夢眠:これも、試しに手書き文字にしてみましょうか。
二宮:「夢眠書店、はじめます」は話し言葉なので、手書きの文字が合うかもしれませんね。
夢眠:具体的にデザインする時に、実際に両方置いてみて見比べたりできますか?
黒田:大丈夫ですよ、そうしましょう。ちなみに題字をレタリングするときは、拡大・縮小した時のために大きめに書くのと、完全に塗りつぶさないようにしてくださいね。きれいに塗りつぶしてしまうと手書きの風合いが出ないので。
夢眠:わかりました!
黒田:そういえば、題字をレタリングするって、今はもうあまりないですよね。昔は“文字を書く”という仕事を専門にしている人がたくさんいたんですよ。(見本を見せながら)ほら、当時はこんなふうに手書きで題字を書いていたんです。
夢眠:「教育ママの新兵器」「新案特許を取ろう!」……筆で書いたような字とか、ちょっとクセをつけたインパクトのある字とか、いろいろあって面白いですよね。学生時代に図書館でコピーしまくってたなあ(笑)。懐かしいです。
「夢眠書店開店日記」がついに書籍化! 本のお仕事とその現場を取材してきた連載なんだから、せっかくなら装幀を体験してみよう!! ……ということで今回は、新潮社装幀部のお二人に教えていただきながら、ねむちゃんが『本の本―夢眠書店、はじめます―』のデザインを一つひとつ考えていきます。
“装幀”に対してざっくりしたイメージをお持ちの方は多いかと思いますが、具体的にはどんなことをするのでしょうか? そしてそれには、どんな人々が関わっているのでしょうか?
次回もお楽しみに!