「普段は気まぐれなのに、泣いている時にそっと寄り添って顔をなめてくれた」
「悪さをすると、罪悪感があるのか飼い主から目をそらす」
そんなペットとのほっこりエピソードが、実は人間の“都合のいい思い込み”にすぎないかもしれない……!?
気になる〈ペットの本音〉を収録した、『マンガでわかる猫のきもち』『マンガでわかる犬のきもち』が今話題です。
- マンガでわかる猫のきもち
- 著者:ねこまき 今泉忠明
- 発売日:2016年06月
- 発行所:大泉書店
- 価格:1,080円(税込)
- ISBNコード:9784278039597
- マンガでわかる犬のきもち
- 著者:影山直美 今泉忠明
- 発売日:2017年10月
- 発行所:大泉書店
- 価格:1,080円(税込)
- ISBNコード:9784278039405
今回はそんな2冊について、出版元である大泉書店の方にお話を伺いました。
ちなみに本書の編集を担当した植村さん(写真左)は10年以上三毛猫を飼っている「猫派」、営業部の大沼さん(写真右)は実家で3代続けて柴犬を飼っていた「犬派」だそうです。
今回取材にご協力いただいた方
(左から)
大泉書店 出版部 植村百合さん
同 営業部 課長 大沼宏彰さん
長く飼っている人も意外と知らない! 猫と犬の“本当のきもち”
――まずは『マンガでわかる猫のきもち』『犬のきもち』刊行のきっかけを教えてください。
植村:世の中に“猫のきもち”をテーマにした本がたくさんあることからもわかるように、猫を飼っている方は猫のことを知りたいという気持ちがとても強いんです。猫は単独行動をする動物なので、社会生活を営む人間とは根本的に違っています。このミステリアスさが猫の魅力ではあるのですが、それゆえ「うちの猫の気持ちを知りたい」と思っている飼い主さんは多いと感じていました。
そして“謎多き存在”として猫が愛される一方で、犬には比較的「わかりやすい」というイメージを抱いている方が多いと思います。実際に私も、今さら「犬の気持ちを知りたい」というニーズはないんじゃないかと思っていました。でも調べてみると、従順で実験しやすい動物だけに毎年新しい研究が行なわれていて、新事実が次々と発見されているようなんです。「これは面白い!」と思い、シリーズ続刊として『マンガでわかる犬のきもち』を作ることにしたんです。
――これまでの関連本との違いは、どこにあるんでしょう?
植村:類書の焼き直しにならないよう、『マンガでわかる猫のきもち』『犬のきもち』には、まだ世間に知られていない猫と犬の最新情報を詰め込みました。監修をお願いしたのは、『ざんねんないきもの事典』でも知られる動物学者の今泉忠明さんです。今泉先生の知名度が抜群なので、発売時の書店さんからの反応もよかったですね。
もう一つの特徴は、漫画(右ページ)とそのエピソードにまつわる生態の解説(左ページ)をセットにして、1つのテーマを見開きで完結させている点です。ちょっとした時間に気軽に読めて、内容がスッと理解できるよう、情報量やデザインにもこだわりました。
漫画でほっこり、解説でガックリ!?
――右ページの漫画と、左ページの解説にギャップがあるのが面白いですよね。漫画でほっこりした後、解説を読んでガックリさせられるというか(笑)。
植村:『マンガでわかる猫のきもち』は特にそうですよね(笑)。たとえば「飼い主が泣いている時、猫が涙をなめてくれた」というエピソード。飼い主が「私のことをなぐさめてくれている!」と感動するところで漫画は終わっているんですが、解説では「猫になぐさめる気はない」「水分を摂っていただけ」とバッサリ。人間は理想や願望をペットに投影しがちな部分がありますが、ここまで容赦なく事実を突きつけられるというのは、なかなか衝撃的なんじゃないかなと思います。
ただ、「猫の奴隷」を自認していらっしゃる愛猫家の皆さんには、そんな落差もむしろ大変喜んでいただけているようですよ(笑)。
――ねこまきさん(代表作:『まめねこ』『ねことじいちゃん』)の漫画が、その落差をさらに広げているように思います。
植村:『ねことじいちゃん』の鉛筆に水彩画のタッチがとても素敵だったので、今回もそのタッチでお願いしました。ねこまきさんらしい、くすっと笑えて、その後にじんわり胸があたたかくなるような漫画を描いていただきました。ここだけ読んでも満足できますが、やはり解説も味わっていただきたいですね。
- ねことじいちゃん
- 著者:ねこまき
- 発売日:2015年08月
- 発行所:KADOKAWA
- 価格:1,080円(税込)
- ISBNコード:9784040676715
従順に見えて、犬は人間の嘘を見抜いている
――『マンガでわかる犬のきもち』についてはどうですか?
植村:『犬のきもち』に関しては、「犬は人間の嘘を見抜いている」「死の概念がない」などがあまり知られていないんじゃないかなと思います。犬といえば「従順」「賢い」というイメージを多くの方がお持ちだと思うんですが、それゆえに「あれ?」と引っかかるシーンがあるんですよね。そういう「普段何となく気になっていたこと」にスポットを当てています。
たとえば、飼い主が溺れたふりをして、犬の忠誠心を試そうとする。でも犬が一向に助けにこない……というケース。実は、本当に危機的な状況が迫っている時、人間からは特殊なにおいが出ているんだそうです。だから、溺れたふりでは犬は反応しない。ひたすら飼い主の言うことを聞いているわけではなくて、わかっているところはわかっているんですよね。
――「それでも人間のことを慕ってくれている」というところにキュンとしました。
植村:そうなんです。そういうひたむきなところに、感動する読者が多いようですね。「死の概念がない」についても、たとえば飼い主が亡くなってしまった場合、「ずっといない」ということは理解できても「亡くなってしまったのでもう会えない」というところまでは理解できないのだそうです。また自分が死ぬ時もわからないんだとか。「待っていたら現れるはずだ」「ひと眠りすればまた遊べるだろう」と思っているところを想像すると、胸がぎゅっとなってしまいますよね。
『マンガでわかる犬のきもち』は「柴犬さんのツボ」シリーズの影山直美さんに漫画を描いていただいたんですが、影山さんも出来上がった本を通して読んで、号泣してしまったそうです。私もこの本を作ったことで、犬がどれだけ人間を好きなのかを改めて実感しました。
あと、影山さんの描く犬のしぐさって本当にかわいいんですよ。『マンガでわかる犬のきもち』には柴犬、トイプードル、ラブラドールレトリバーの3種の犬が登場するんですが、私のイチオシは“見返り柴”です。柴犬が後ろを振り返った時に、首輪に顔まわりの肉が乗ってクニュッとなるところ……。こういう瞬間をうまく切り取ってくださっているので、犬好きにはたまらないと思います。
- 柴犬さんのツボ
- 著者:影山直美
- 発売日:2006年09月
- 発行所:辰巳出版
- 価格:1,080円(税込)
- ISBNコード:9784777803149
書店店頭で「猫派 vs.犬派」対決! 結果は……?
――ねこまきさん、影山さんは書店員さんにもファンが多いとお聞きしました。
大沼:おかげさまで、作家コーナーを設けて本書をアピールしてくださった書店様もありました。お二人とも愛読者がたくさんいらっしゃるので、最新刊を心待ちにしている方が多いんです。なので“作家コーナー”を作っていただけたのはありがたかったですね。
あとは『犬のきもち』が発売された時に、いくつかの書店様で漫画のパネル展を行ないました。あわせて「犬派 VS 猫派」という参加型企画を用意して、犬派か猫派か、お店を訪れた方にシールで投票してもらったんです。お子さんも参加できる内容なので盛り上がりましたね。結果は僅差で猫派が勝利しました。
――『犬のきもち』が発売されたことで、『猫のきもち』の売上がさらに伸びたという気になる情報もありました。
大沼:1作目と2作目はお互いにいい効果をもたらしていますね。1作目の『猫のきもち』が売れたことで『犬のきもち』にも期待が集まって、『犬のきもち』は発売前に重版が決まりました。発売後1週間でほぼ売り切れてしまったので、発売後重版もしています。
また『猫のきもち』と並べて販売するようお願いしたところ、協力してくださったお店では『猫のきもち』の売上がかなり伸びました。猫・犬と2つ並ぶと、お客様も選びやすいですよね。書店様にはぜひ、2冊一緒に販売していただきたいなと思います。
――それでは最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします!
植村:猫も犬も、人と生きることを選んだ動物なんですよね。猫は野生のリビアヤマネコから家猫に、犬は狼から人と暮らすことで犬に。野性を捨てて人と幸せになることを選んでくれた動物なので、彼らの気持ちを理解する努力を続けていくことが、人間の責任かなと思います。この本を読んで、まずは身近な猫や犬の幸せを考え、実現していってほしいですね。
(取材日:2018年2月2日)